たぶんサヨナラまたはハレルヤ

連作「たぶんサヨナラまたはハレルヤ」 成瀬悠太 恋文をワードで書いて保存してメールに添付して送ります地下鉄のドアにはられた広告のシールを剥がしたくて見つめる愛は食べものじゃないのとすれ違う度に諭してくれる先生人はみなあんな姿で死ぬのかよ こん…

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屋上の給水塔からグッドラック これから出会うすべての人へ(成瀬悠太)

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その穴に落っこちてしまう小ささで生きてますでもまた這い上がる(成瀬悠太)

037:ポーズ(成瀬悠太)

手の甲を額に当てて左手を空にかざせば宇宙のポーズ

036:暑(成瀬悠太)

友人が3人結婚した夏です 残暑お見舞い申し上げます

035:罪(成瀬悠太)

阿には吽 罪には罰を 恋人に振られたぼくに燃える夕日を

ロックンロール

連作「ロックンロール」 成瀬悠太 なんとなく奇跡がおこる気がしてて春の川辺で道草をくう真夜中を独り占めした今ならば書ける言葉もあるはずなのにセックスやドラッグなんか知らなくて方程式をスムーズに解く身体中心臓みたいにシンボルのない恋です いまは…

034:掃(成瀬悠太)

掃除機は壁の向こうで生活を慈しむような音を鳴らして

033:奇跡(成瀬悠太)

ゆたゆたと回る空から降りてくるような奇跡を待ってさよなら

032:町(成瀬悠太)

終わり行く今日という日の弔いに町は灯りを灯していった

031:電(成瀬悠太)

どの駅の電光掲示板も壊れ天国地獄を表示している

バレンタインデー

窓辺から見えない星に願いつつそっとアポロを口にはこんだ(成瀬悠太)

030:遅(成瀬悠太)

遅咲きの桜の花が散り逝くをふたり眺むるような青春

バレンタインデー

娘らはカカオの菓子を携えて 恋を信ずる聖者の行進(成瀬悠太)

029:公式(成瀬悠太)

あっている(小さい小さい詩を書く)公式通りに出した答えは

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黒猫と肩を並べて歩き出す なんだろ たぶんグッドモーニン(成瀬悠太)

028:説(成瀬悠太)

廃ビルの壁に書かれた説教は「らくがきするな」というらくがきで

バレンタインデー

銀紙をそっと剥がした板チョコの歯形がとても美しい夜(成瀬悠太)

Non Title

初恋の相手は掃除のあいだ中ほうきでギターを弾く奴でした(成瀬悠太)

027:水(成瀬悠太)

砂浜に書いた手紙はひとりごと 水平線に揺れる船影

バレンタインデー

ジャン=ポール・エヴァンのチョコに込められた気持ちをどういうふうに量ろう(成瀬悠太)

026:震(成瀬悠太)

震源はどこだろなんてばかみたい 大事な人は近くにいない

025:ミステリー(成瀬悠太)

ミステリーとはかけ離れてる日常で恋するように生きていたいの

024:謝(成瀬悠太)

ウミガメの水槽の前 謝謝と感謝を述べるクラスメイトは

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虚無であることを謳えばなおさらに虚無となりゆく日本バンザイ(成瀬悠太)

023:蜂(成瀬悠太)

三段のホットケーキに蜂蜜を垂らす瞬間 笑みがこぼれる

022:でたらめ(成瀬悠太)

でたらめな愛が世界を救う夜 救われている星に寝そべる

021:洗(成瀬悠太)

空耳は(洗われているコンバース)いまここだけが世界のすべて

020:幻(成瀬悠太)

南口方面改札口を出る 幻のメロンパンを探して

019:層(成瀬悠太)

オゾン層あたりの空で語られる「まず吉牛で牛丼食いてぇ」