連作「プログラム」 成瀬悠太
どこまでも行ける気がした八月の少年の足陽炎を追い
美しいものを撮ろうとして覗くファインダー越し君の泣き顔
欠落を欠落で埋めようとする 会いたい人に今日は会えない
街角の本屋で耳を傾ける 19世紀のピアノソナタに
図書館の哀しみめいた静謐に君を重ねし曇天の春
プログラムされてるように生きていてあしたが来ないように祈った
さよならを待っていたんだ モノクロの景色が通り過ぎた残像
法則をひとつ知っては不自由な大人になっていくのでしょうか
少しずつ良くなっていく仕組みなら明日が来るのも悪くないけど
病室を沈む夕日が染めていく それは原始的な赤です